『思考が緩む』ってどんなこと? 問題「東京から大阪まで行くには、どんな方法がありますか?」

 

私たちはいつも、
何かを選択しながら生きています。

それと同時に、
様々な選択肢があるにもかかわらず、

・最初から「これはダメ、無理」と決めつけている
・「○○すべき、□□せねば」といって、多々あるはずの選択肢を、
最初からなきものと決めてかかっている

ことも、往々にしてあります。

知らず知らずのうちに、
自分で選択肢を狭めているなんて、
苦しいことこの上ないですよね。

『思考が緩む』と、選択肢がどのように広がっていくのか?

そのことを子どもに気づかせてもらった授業があったので、
皆さんと一緒にシェアしたいと思います。

問題「東京から大阪まで行くには、どんな方法がありますか?」

 

ビリーフリセット®・アドバイザー/コンダクターの末広康三です。

5年生の社会科の授業での出来事です。
地図帳を使い、日本の交通機関の学習を一通り終えたところで、
次のような問題を出しました。

 

問題「東京から大阪まで行くには、どんな方法がありますか?」

ハイハイ!! と、一斉に手が挙がります。

「新幹線を使います。」
「飛行機で行けます。」
「自動車。東名高速と名神高速を使って。」

よしよし、先ほどの学習の復習ができているぞ!!

ここで、挙手する子が一気に減ります。
これは、想定の範囲内です。
実は、私の発問の意図は、ここから先が勝負なのです。

 

まだ手を挙げている数名の子どもに立ってもらい、順番に指名しました。

「時間がかかるかもしれないけれど、東海道線に乗って行けます。」
「○○さんと同じ自動車なんだけど、国道一号線でも行けます。」
「□□さんと同じ飛行機なんだけど、羽田空港からじゃなくて、成田空港からも行けます。」

これらの発言を聞いた子どもたちからは、驚きのざわめきが…。

そこで、私の一言。
「鉄道・自動車・航空機、どれも使っているけれど、それぞれ別の手段や出発地点を考えていますね。素晴らしいです。」

 

すかさず、ハイハイ!! と元気な声。

「先生、船でも行けます。地図帳のここに載っています。」

この地図帳の船舶航路図には、
紀伊半島をぐるっと回る、赤い線が記載されていました。

 

ここから先は、
子どもたちの勢いが止まりません。

私は、一つ一つの発言に頷きながら、それを黒板に書いていきます。

「大変かも知れないけど、自転車でも行けます。」

「歩き。江戸時代は電車なんかなかったから。がんばれば、歩ける!!」

すかさず、
歴史好きの子からの突っ込みが…。

「歩いてもいいけど、2週間かかるよ。」
「ええっ!そんな?」
一同、大爆笑!!

「江戸時代にヒントをもらって、籠や馬。でも、お尻が痛くなっちゃうな。」

ここでも一同、大爆笑!!

 

視点を変えると、多様な選択肢が見つかる

 

笑い声がまだ収まり切らない教室内に、
無言の小さな挙手が…。

普段から口数の少ない子で、
声量も大きくはありません。
挙手もあまりしないほうでした。
その☆☆ちゃんが、今まさに、
目の前で挙手しているのです。

私はそれを見逃しませんでした。
いや、見逃してはならない!!
という思いが先行していました。

 

その子が席に立って発言しようとしている姿を見て、
教室は急に静まりました。

「先生、『組合せ』でもいいですか?」
「いいですよ。どうぞ。」

周囲の視線が、一斉に集まります。

「大阪の親戚の家に行ったとき、お兄ちゃんが電車好きだから、新幹線を名古屋で降りて、近鉄のアーバンライナーに乗って、大阪に行きました。」

その瞬間、驚きと歓喜の入り混じった声が上がり、
発表を確かめるために、
地図帳にかじりつく子どもたちの姿がありました。

「☆☆ちゃん、ナイス!!」
「本当だ。スゲー!!」
「そうか。直行しなくしても、途中で乗り換えてもいいんだ。」
「遠回りしても、大阪に着けばいいんだね。」

 

この勇気ある発言が、
子どもたちの視点を大きく変えてくれました。

近くの席の子と、一緒にルートを探す光景が、
あちらこちらで見られます。

 

ほどなくして、
「先生…。」と言いながら、
自信なさげに私のところにやって来て、
耳打ちする子がいました。

「よし、この場で言ってみよう。」
と、私は促しました。

「今年の正月、仙台のおばあちゃんの家に行って、そこから、いとこたちと一緒に大阪のUSJに行きました。」

またまた、大歓声。

 

すかさず、別の子が立って発言。

「去年の夏、家族でハワイに行ったの。でも、このことはみんなには言っていなかったんだけど…。」
「え?なに何?」と注目する子どもたち。

「行きは成田空港からだったんだけど、帰りは天候の関係で成田に戻って来れなくて、関西空港に下りたの。これも、東京から大阪まで行く方法に入るのかな?」

 

この発表は、私の予想を超えたものでした。
驚きのあまり、ただただ啞然とする子。
我が事のように喜ぶ子。
スタンディングオベーションして拍手する子…。

この瞬間、
心の底からの幸福感を味わっている私がいました。

 

『思考が緩む』ことを実感すると・・・

 

この授業を通して、
子どもたちに実感して欲しかったこと。

それは、
「目的に向かうための選択肢は、実はたくさんある。」
「その中から、時と場合によって選択していけばいい。」
ということです。

 

子どもたちの意見は、最初、
・新幹線 ・飛行機 ・自動車
という、ごく「一般的」で「常識的」な考えでした。

それが、
『他の考えを言ってもいいんだ!!』
という<安心感>が生まれたことにより、
他の交通機関や手段へと、
視点が徐々に広がってきました。

さらに、「組合せ」「迂回」などの視点へと広がり、
最後には、自分の体験に裏打ちされた、
説得力のある意見表明へと続いたのです。

 

さて、翻って私たち。
自分のことを、もう一度見つめ直してみましょう。

たくさんの選択肢が考えられるのに、
最初から思考を狭めてしまっている。
だから、
「答えが、方法が、見つからない!!」
とオロオロしてしまい、
自分で自分を窮地に追いやっていた…。

このようなこと、一度や二度?
いやいや、いつもそうなんです、という方も??

 

正直言って、この思考の仕組み、
このことに気づいている人は少ない。

「それ以外、考えられない!!!!!!」

他のことが思い浮かんでも

・みっともない
・恥ずかしい
・そもそも、ありえない

などと、最初から切り捨て、
そんなことを思い浮かべた自分に
<罪悪感><嫌悪感>さえ感じて、
《自分自身に✖をつける》ことをしているのです。

「こうあるべきだ」
「こうせねばならない」

という、自分が無自覚に設定した
<思考の枠>にはまり込んでいる、
とも言えます。

 

私たちは時折、
このような『思考を緩める』ワーク的な事をすることで、
自分の今の状態に気づくことをしていくとよいと思います。

『思考が緩む』ことが実感できると、
それは体感を通した自分のものになってきます。

思考(アタマ)ばかりにたよらず、
感情(ココロ)や身体(ハラ)にもいい影響をもたらし、
「生きづらさ」の軽減が図れるようになってきます。

 

今回は、
子どもたちの素晴らしさに教えられたエピソードを通して、
『思考が緩む』ことの大切さについて
シェアさせていただきました。

 

『学習会』で、一緒に学んでいきませんか?

 

(1)オンラインイベントに、ゲスト出演します。

7月24日(金)18時~19時
<ライブ配信>
『日本におけるメンタルヘルスの現状と課題
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詳しい内容は、こちらから

 

(2)『康三塾 「心のしくみ」学習会』を開催します。

8月上旬に開催します。
日時・場所・内容については、近日中にお知らせします。

お楽しみに!!

 

20-010 サフィール伊豆

<伊豆に立ち寄ってから大阪に行ってもいい>

投稿者プロフィール

末広 康三
末広 康三
 <すえひろ・やすみつ>
 現役の小学校教師としてバリバリと仕事をこなしてきたが、ある朝、突然動けなくなり「強制終了」を体験。職場復帰後、友人経由で転送されてきた「とあるブログ」をきっかけに自己探求に目覚め、「心のしくみ」についての学びをスタートさせる。
 現在、小学校勤務のかたわら、これまでの経験を活かし、[心のしくみ]や[人としてのあり方・生き方]を先生・保護者・子どもたちに伝えていきたい」という願いを実現すべく、カウンセラー・セミナー講師を目指し修行中。

詳しいプロフィールはこちら。
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