テストやプリント問題に書かれた答えに、
赤鉛筆や赤ペンで〇(まる)付けをするのが、
多くの先生方がされる、一般的な採点の仕方です。
私も、普段はそのようにしているけど、
時には、子どもたちが書いた「名前」にも、〇を付けることがあります。
子どもたちから『?』という表情されることがよくあるのですが、
さてその真意は…?
名前が、あまりにもきれいに書かれていたから。
ビリーフリセット®アドバイザー/コンダクターの末広康三(すえひろ やすみつ)です。
私が最初に担任したのは、5年生。
算数の計算問題プリントに書かれた名前が、
書写の教科書のお手本のように丁寧で、私よりも数段上手(うわて)でした。
思わず名前に〇をつけて返却したら、それを目ざとく見つけた子がいました。
普段はグチャグチャに文字を書いているのですが、
「先生を試してやれ。」とでも思ったのでしょう。
いつも以上に、丁寧に名前を書いて持ってきました。
私は、その子の計略に気づきながらも、
何事もなかったかのように、名前に〇をつけました。
「先生、本当に名前に〇付けるんだ!!」
と触れ回ったことで、他の子も真似して、丁寧に書くようになりました。
教師が、「名前を丁寧に書きなさい。」と指示しても、
すぐには反応しないのが常です。
でも、子ども自身が「これは、いい。」と気づき、納得すると、
こちらが指示しなくても、子どもはそのよさを取り入れ、進んで行動します。
それからというもの、〇をつける際には、
「すばらしい!!」の一言も付け加え、
その子のよさと頑張りを認める言葉がけをするようにしました。
そのプリントには、名前しか書かれていなかったから。
別の年、また5年生を担任しました。
その子は、学習が大の苦手でした。
鉛筆は、文字を書く文房具ではなく、遊ぶための道具の一つに過ぎませんでした。
ある日、回収した漢字小テストの氏名欄に、
ヨレてかすれた文字で、下の名前だけ書いてあったのを見つけました。
問題プリントには普段、お気に入りの漫画のキャラクターか、
ソフトクリームの上半分(笑)だけを大量に書いているのに…。
私は迷わず、その名前に大きく〇をつけました。
名前に〇をつけてあるのを見た彼は、とても驚いた様子でしたが、
嬉しそうな表情で、そのプリントをランドセルにしまい込んでいました。
次のプリントには、下の名前に加えて、苗字も平仮名で書いてありました。
テスト問題の漢字は、いつもながら一切書いていませんでしたが。
でも、私は名前の一文字一文字に、大きく〇をつけました。
その次のプリントに書かれた名前には、1年生で習った漢字が2つ。
平仮名だけの名前から、変換されていました。
私は、平仮名には〇、漢字には◎をつけ、
名前の横に、赤鉛筆で「すばらしい!!」と書きました。
さらにその次のプリントには、フルネームが全て漢字で書かれていました。
返されたプリントを見たその子は、
「俺、花丸もらったぞ!!」と、大声で教室を走り回っていました。
(後になって教えてくれたことなのですが、この時、生まれて初めて花丸をもらったのだそうです。)
〇つけが、その子の「□□を認める」ことにつながった
こんな体験があったため、
意識して、また折に触れて「名前に〇」をするようになりました。
<心のしくみ>を学んでからは、さらに気がついたことがあります。
その子の《存在》を示している名前に、〇をつけることは、
『その子の存在を、丸ごと認めること』
になっている!!!!! のだと。
漢字の書き取りや計算問題ができていなくても、
テストの解答欄が空欄のままでも、
「『自分』という存在は否定されずに、ちゃんとここにあるのだ。」
ということを、この先生は認めてくれている。
「もう、自分は大丈夫だ。」
「ここに存在していて、いいんだ。」
という、実感、納得感、気付き、肚落ち感、安心感、充実感、所属感、自己有用感、自己肯定感 etc.
その子が感じる、これらのいずれかが満たされて、
それが活動のエネルギーへとつながったのではないか、と。
名前に〇をつけられた子どもたちに、
「あの時、どんな感じがした?」と質問すると、次のような答えが返ってきます。
・うれしかった。
・今まで誰もしてくれたことがなかったから、とても驚いた。
・先生は、細かいところまでよく見てくれているんだなあ、と思った。
・〇がつくと、もっと頑張ろうと思える。
・親からもらった大事な名前だから、これからもていねいに書こうと思う。
そうすることが、自分を大切にすることにつながるから。
今、オトナである私たちは、幼少の頃から、
この社会(家族・学校・友だち・ご近所さん・親戚)で生きていくために、
様々なことを学び、生き抜く術(すべ)を身に着けてきました。
その大きな要素の一つが、
「ビリーフ(思い込み・信じ込み)」。
小さな自分が、これらの社会の中で生きていくために、
自分を守る《装備品》として、身に着けてきたもの。
そして、それらは全て《思考》から作られたものなのです。
例えば、自分が「否定されている」と感じれば、
否定されないよう生きていくために、
小さな頭(それを《思考》という)で考えた、
《自分の定義》を身にまとって生きるようになります。
その《思考》がゆるんでくれば、自分と思考との間にすき間ができる。
ビリーフの下に隠れていた
〈本来的に存在していた自分〉
が出てくる余地が生まれ、それが発揮できるようになってくるのです。
今の私の「回答」とは?
「名前に〇」をすることは、今でも続けています。
子どもたち自身が、
「失敗しちゃったけど、まあ仕方ない。」
「この次は、しっかりやればいい。」
と感じてくれれば、それでいい。
「自分は、できないダメな奴。」
「どうせ、自分には何にもできないし。」
「できない自分は、いても意味がない。」
なんてことを、一瞬は感じるかもしれないけれど、
それ以上思い詰めないでくれれば、それでいい。
だって、その子はすでに、
「自分」という、素晴らしい「存在」
であるのだから。
その「存在」が実際にあることを、目に見える形で示しているのが、
私が実践している「名前に〇をする」ことなのではないだろうか?
これが、
「先生はよく、テストの名前にまで〇をつけるけど、なぜなの?」
という質問に対する、今の私の回答です。
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投稿者プロフィール
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<すえひろ・やすみつ>
現役の小学校教師としてバリバリと仕事をこなしてきたが、ある朝、突然動けなくなり「強制終了」を体験。職場復帰後、友人経由で転送されてきた「とあるブログ」をきっかけに自己探求に目覚め、「心のしくみ」についての学びをスタートさせる。
現在、小学校勤務のかたわら、これまでの経験を活かし、[心のしくみ]や[人としてのあり方・生き方]を先生・保護者・子どもたちに伝えていきたい」という願いを実現すべく、カウンセラー・セミナー講師を目指し修行中。
詳しいプロフィールはこちら。
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